遺産相続時の財産の評価要領について
2024/08/07
遺産相続時の財産の評価要領について
遺産相続時に問題となる遺産の評価要領について、解説します。
はじめに
遺産相続において、財産の評価は非常に重要なプロセスです。財産の評価は、相続税の算出や相続人間の公平な遺産分割に直結するため、正確かつ公正に行う必要があります。以下に、遺産相続時の財産の評価要領について、その意義、評価基準、具体的な評価方法、および注意点を論じます。
1 財産評価の意義
遺産の評価は、相続税の課税標準額を決定するための基礎資料となります。評価額が正確でない場合、
適正な相続税額が計算できず、相続人にとって不利益が生じる可能性があります。また、公正な遺産分割
を行うためにも、各財産の正確な評価が不可欠です。
2 財産評価の基準
財産の評価基準は、原則として「時価」を基に行います。時価とは、相続開始日(被相続人の死亡日)
において、その財産が市場で取引される場合の価格を指します。各財産ごとに評価方法は異なりますが、
一般的な評価基準は以下の通りです。
(1)不動産: 固定資産税評価額や路線価、公示価格などを基に評価します。
(2)上場株式: 相続開始日の終値または相続開始日の前月、前々月、前々々月の月平均株価の中で最も低い
価格を基に評価します。
(3)非上場株式: 会社の純資産価額や利益計上価額を基に評価します。
(4)預貯金: 相続開始日における残高を評価します。
(5)動産: 市場価格や専門家の鑑定評価を基に評価します。
3 具体的な評価方法
(1)不動産の評価:
土地: 路線価方式(主要道路に面する土地について国税庁が定める評価額)や倍率方式(固定資産税評
価額に一定の倍率を乗じる方式)を使用します。土地の形状、利用状況、権利関係なども考慮されま
す。
建物: 固定資産税評価額を基に、建物の種類や構造、築年数などを考慮して評価します。
(2)上場株式の評価:
相続開始日の終値または相続開始日の前月、前々月、前々々月の月平均株価の中で最も低い価格を選
択して評価します。これにより、株価の変動リスクを減らすことができます。
(3)非上場株式の評価:
純資産価額方式: 会社の純資産(資産から負債を差し引いた額)を基に評価します。
配当還元方式: 直近の配当実績を基に、一定の還元率を適用して評価します。中小企業など、配当が安
定している場合に適用されます。
(4)預貯金の評価:
相続開始日における預貯金の残高をそのまま評価額とします。外貨預金や定期預金などの場合も、相
続開始日の為替レートや利率を基に評価します。
(5)動産の評価:
自動車、貴金属、美術品などの動産は、市場価格や専門家の鑑定評価を基に評価します。特に高価な
動産については、専門の鑑定士による評価が推奨されます。
4 注意点
(1)評価の正確性:
財産評価は相続税の計算基礎となるため、正確性が求められます。不正確な評価は、過少申告加算税
や延滞税の対象となる可能性があります。
(2)評価基準の適用:
各財産の評価基準は法律や税務当局の指針に基づいており、適切に適用することが重要です。特に複
雑な財産については、税理士や弁護士、不動産鑑定士などの専門家の助言を受けることが推奨されま
す。
(3)相続人間の公平性:
財産の評価が不公平な場合、相続人間でトラブルが生じる可能性があります。正確で公正な評価を行
い、遺産分割協議を円滑に進めることが重要です。
5 結 論
遺産相続時の財産評価は、相続税の算出や公正な遺産分割を実現するための重要なプロセスです。各財
産の特性に応じた評価基準と方法を適用し、正確かつ公正な評価を行うことが求められます。専門家の助
言を活用しながら、慎重に評価を進めることで、相続手続きを円滑に進めることが可能となります。