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自筆証書遺言書保管制度について

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自筆証書遺言書保管制度について

自筆証書遺言書保管制度について

2024/08/09

自筆証書遺言書保管制度について

遺言書を確実に相続人に伝える「自筆証書遺言書保管制度」について解説します。

はじめに

 日本における遺言の形式の一つである自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印することによって作成される遺言書です。この形式の遺言は、比較的簡便に作成できる反面、紛失や偽造のリスクがあることから、遺言の保管が重要な課題とされてきました。こうした背景のもと、2020年7月から施行された「自筆証書遺言書保管制度」は、遺言者の意志を確実に保護し、相続の円滑な進行を図るための制度です。本稿では、この制度の概要、制度導入の背景と目的、手続きの詳細、制度利用のメリットとデメリットについて解説します。

1 自筆証書遺言書保管制度の概要

  自筆証書遺言書保管制度は、法務局が遺言者から自筆証書遺言を預かり厳重に保管する制度です。遺

 言者が作成した自筆証書遺言書を安全に保管し、相続開始後に確実に発見されることを目的としていま

 す。この制度では、遺言書の保管から検認手続きの不要化まで一貫して法務局が関与し、遺言者の意思が

 確実に尊重されるよう配慮されています。

2 制度導入の背景と目的

  自筆証書遺言は、その簡便さから広く利用されていますが、その一方でいくつかの問題点が指摘されて

 いました。特に、遺言書の紛失、破損、改ざんのリスクや、相続人による発見の困難さが問題とされてき

 ました。また、遺言書の検認手続きが煩雑であることから、相続人間の争いの種となることも少なくあり

 ませんでした。こうした課題を解決するために、遺言書の安全な保管と、相続開始後のスムーズな手続き

 を目的として、法務局が遺言書を保管するこの制度が導入されました。

3 自筆証書遺言書保管制度の手続き

  自筆証書遺言書保管制度の利用手続きは、以下のように進められます。

(1)遺言書の作成:

   遺言者は、自筆証書遺言を作成します。この際、遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印する必要

  があります。

(2)保管申請:

   作成した遺言書を法務局に持参し、保管申請を行います。保管申請の際には、遺言者の本人確認書類

  (運転免許証、パスポートなど)と、手数料が必要です。遺言書は法務局の職員によって確認され、形式

  的な不備がないかチェックされます。

(3)保管証の発行:

   遺言書の保管が受理されると、法務局は遺言者に対して「保管証」を発行します。この保管証は、遺

  言書が法務局に正式に保管されたことを証明するものであり、遺言者の安心感を高めます。

(4)遺言書の閲覧および取り出し:

   遺言者は、申請により自筆証書遺言を法務局で閲覧することができます。また、遺言書を取り出すこ

  とも可能です。ただし、取り出した場合、再度保管するには新たに手続きを行う必要があります。

(5)相続開始後の手続き:

   遺言者の死亡後、相続人は法務局に対して遺言書の有無を確認することができます。遺言書が保管さ

  れている場合、法務局はその内容を相続人に通知します。この時点で、遺言書の検認手続きは不要とな

  り、遺言の内容に基づいた相続手続きが円滑に進められます。

4 制度利用のメリット

  自筆証書遺言書保管制度には、遺言者および相続人にとって多くのメリットがあります。

(1)安全な保管:

   法務局が遺言書を厳重に保管するため、紛失や破損、改ざんのリスクが大幅に低減されます。これに

  より、遺言者は安心して遺言を作成し、保管することができます。

(2)検認手続きの不要化:

   保管された遺言書は、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが不要となります。これにより、相続

  手続きが迅速に行われ、相続人間の争いを未然に防ぐことができます。

(3)遺言の確実な発見:

   遺言書が法務局に保管されていることが相続人に通知されるため、遺言書の存在が確実に確認されま

  す。これにより、遺言者の意思が確実に尊重されることになります。

(4)プライバシーの保護:

   保管された遺言書の内容は、相続開始まで法務局以外の第三者に開示されることはありません。これ

  により、遺言内容が生前に漏れることなく、遺言者のプライバシーが保護されます。

5 制度利用のデメリット

  しかしながら、この制度にはいくつかのデメリットも存在します。

(1)手数料の発生:

   遺言書の保管には手数料がかかります。これにより、遺言書作成のコストが増加する可能性がありま

  す。

(2)保管のみの機能:

   法務局は遺言書を保管するのみであり、遺言内容の有効性や法的妥当性については保証しません。そ

  のため、遺言書の内容が法的に有効であるかどうかは、遺言者自身で確認する必要があります。

(3)保管の範囲:

   この制度は、自筆証書遺言に限られたものであり、他の形式の遺言書(公正証書遺言や秘密証書遺

  言)は対象外です。そのため、他の形式の遺言書を希望する場合には、別途手続きを行う必要がありま

  す。

おわりに

 自筆証書遺言書保管制度は、遺言者の意思を確実に保護し、相続手続きの円滑な進行を支えるための有用な手段です。遺言書の安全な保管、検認手続きの不要化、遺言の確実な発見といった多くのメリットを提供する一方で、いくつかのデメリットなども存在します。遺言者および相続人にとって、最適な遺言書保管の方法を選択することが重要であり、制度のさらなる改善が期待されます。この制度を適切に活用することで、遺言者の意思が確実に尊重され、相続手続きが円滑に進むことが期待されます。

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