行政書士・海事代理士安江聖也事務所

相続土地国庫帰属法について

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相続土地国庫帰属法について

相続土地国庫帰属法について

2024/08/20

相続土地国庫帰属法について

――土地を相続しない方法

 はじめに

 少子高齢化が進む現代日本において、土地の相続が課題となるケースが増えています。特に、管理が困難な土地や売却が難しい不動産を相続したくないという声は少なくありません。相続した土地の管理費用や固定資産税の負担を避けたいと考える方々に向けて、2023年4月に施行された「相続土地国庫帰属法」は一つの解決策となる可能性があります。本稿では、この法律の概要と、土地を相続しない方法について、行政書士の視点から解説します。

1. 相続土地国庫帰属法の概要

 「相続土地国庫帰属法」は、相続によって取得した土地を一定の条件のもとで国庫(国)に帰属させることができる制度です。

 この法律は、相続人が土地の管理や利用に困難を感じ、かつ適切な条件を満たす場合に、国がその土地を引き取ることを認めています。これにより、相続人は土地の管理責任や固定資産税の負担から解放される可能性があります。

 この制度の背景には、過疎化が進む地域や、利用価値が低下した土地の管理に困る相続人が増えていることが挙げられます。国庫帰属を希望する土地が増えることで、適切な土地管理が行われない「所有者不明土地」の増加を防ぎ、土地の有効活用を促進する狙いがあります。

2. 国庫帰属の条件

 国庫帰属を希望する場合、すべての土地が対象となるわけではなく、いくつかの厳格な条件が設けられています。具体的には以下の条件を満たす必要があります。

(1)通常の管理や利用に支障がないこと: 土地が荒れていたり、汚染されていたりする場合、または建物が

  建っている場合には、国庫帰属は認められません土地が適切に管理されていることが前提となりま

  す。

(2)境界が明確であること: 土地の境界が不明確な場合、国庫に帰属させることはできません。隣接する土

  地との境界が明確であり、トラブルの原因となるような問題がないことが求められます。

(3)借地権や抵当権が設定されていないこと: 土地に借地権や抵当権が設定されている場合、それらを解消

  しない限り、国庫帰属はできません。つまり、第三者の権利が絡んでいない土地であることが必要で

  す。

(4)その他、法務大臣が定める基準を満たすこと: これには、特定の法令違反がないことや、過去に紛争が

  発生していないことなどが含まれます。具体的な基準はケースバイケースで判断されます。

3. 手続きの流れ

 国庫帰属を希望する場合の手続きは、以下の流れで行います。

(1)申請書の提出: 相続人は、国庫帰属を希望する土地について、所定の申請書を作成し、法務局に提出し

  ます。

   この際、必要な書類として土地の登記簿謄本や境界に関する証明書(公図等)、場合によっては土地

  の状況を示す写真などが求められることがあります。

(2)審査と判断: 法務局は提出された申請書類をもとに、土地が国庫帰属の条件を満たしているかどうかを

  審査します。必要に応じて現地調査が行われ、条件を満たしていないと判断された場合は申請が却下さ

  れることがあります。

(3)費用の負担: 国庫帰属が認められた場合、相続人は一定の費用を負担する必要があります。これは、土

  地の引き渡しに伴う手続きや今後の管理にかかる費用として徴収されます。

(4)国庫への帰属: 審査をクリアし、費用の支払いが完了すると、土地は国庫に帰属します。この時点で、

  相続人はその土地に対する一切の権利を失い、管理責任や税金の負担から解放されます。

4. 国庫帰属以外の選択肢

 国庫帰属が認められない場合や、別の選択肢を検討したい場合には、以下の方法も考えられます。

(1)第三者への売却: 土地を売却することで、相続人はその土地に対する責任を免れることができます。特

  に都市部や開発可能な地域では、買い手が見つかりやすい場合があります。しかし、売却が難しい土地

  の場合、時間がかかることもあります。

(2)寄付: 自治体やNPO法人などに土地を寄付することで、土地の管理責任を移転することが可能です。特

  定の地域で有益なプロジェクトが進行している場合、その土地を提供することで社会貢献にもつながり

  ます。

(3)名義変更や共有持分の整理: 土地の所有権を共有者の間で整理し、相続人の持分を売却したり放棄する

  ことも可能です。ただし、共有者間の合意が必要であり、紛争が発生するリスクもあります。

5. 行政書士の役割

 相続土地国庫帰属法を活用する際や、他の相続対策を検討する際には、専門的な知識が必要です。行政書士は、相続人が抱える課題をヒアリングし、最適な解決策を提案します。また、必要書類の作成を行います。

 特に、土地の国庫帰属を希望する場合、申請書類の正確な作成や、国庫帰属が認められるかどうかの事前のアドバイスが重要です。行政書士は、土地の状況を的確に把握し、必要な手続きがスムーズに進むようサポートします。

 おわりに

 「相続土地国庫帰属法」は、土地を相続したくないと考える方々にとって、有力な選択肢となる法律です。しかし、すべての土地が国庫帰属の対象となるわけではなく、厳格な条件を満たす必要があります。行政書士としては、相続人が最適な判断を下せるよう、適切なアドバイスとサポートを提供することに努めます。不動産の相続に悩む方々にとって、この法律を含めたさまざまな選択肢を検討し、最善の解決策を見つけるための一助となることを願っています。

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