小規模宅地等の特例と相続について
2024/09/11
小規模宅地等の特例と相続について
ファイナンシャルプランナーの見地から
賢く使って節税を
はじめに
相続税を計算する際、不動産の評価額が大きく影響を与えます。
特に、被相続人の住居や事業用の土地は、財産価値が高く、そのままでは相続税負担が非常に大きくなる場合があります。このような場合に活用できるのが「小規模宅地等の特例」です。
この特例は、相続における土地評価額を大幅に減額でき、被相続人が住んでいた宅地や事業用地が対象となります。
1 小規模宅地等の特例の概要
「小規模宅地等の特例」は、相続税の計算において、特定の条件を満たす宅地等に対してその評価額を大
幅に減額する制度です。対象となる土地の種類や規模によって異なりますが、最大で80%の評価減を受け
ることが可能です。この評価減により、相続人の税負担が軽減され、土地の売却などを防ぐことができる
という大きなメリットがあります。
2 適用対象
この特例の対象となるのは、以下のような特定の条件を満たす宅地等です。
(1)居住用宅地
被相続人が住んでいた自宅の土地が対象で、相続開始時に同じ住居に住んでいた配偶者や同居親族が
引き続き住む場合、土地評価額の80%が減額されます。
(2)事業用宅地
被相続人が自営で事業を営んでいた場合、その事業用の土地も特例の対象となります。この場合も、
土地評価額が80%減額されます。
(3)貸付事業用宅地
被相続人が土地を貸付事業に使っていた場合も、特例が適用されることがありますが、評価減の割合
は50%です。
また、適用面積には上限が設けられており、居住用宅地は330㎡、事業用宅地は400㎡までとなっていま
す。この範囲内でのみ特例が適用されます。
3 適用条件
この特例を適用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
(1)居住の継続
被相続人が亡くなった後、配偶者や同居親族が引き続きその宅地に住むことが条件です。同居してい
ない場合でも、相続人が住む場合や3年以内に転居した場合には適用されることもあります。
(2)事業の継続
事業用の宅地については、相続開始後も事業が引き継がれることが条件となります。つまり、相続人
がその事業を継続しなければ、特例は適用されません。
4 注意点
この特例を利用するには、いくつかの注意点があります。まず、特例を受けるためには相続税の申告が
必要です。たとえ相続税が非課税となる場合でも、特例を適用するには必ず申告を行う必要があります。
また、宅地の評価減が適用されるためには、申告期限内に必要な書類を整えて税務署に提出しなければな
りません。
さらに、特例の対象外となる場合や適用後に税務署から指摘されることもあります。例えば、相続開始
後に土地を売却した場合や、適用条件を満たさなくなった場合には、特例の適用が無効になることがあり
ます。そのため、事前に専門家に相談し、適切な計画を立てることが重要です。
5 相続対策における活用
この特例は、相続税対策の一環として非常に有効です。特に、資産価値の高い不動産を持つ家庭では、
相続税の大幅な軽減が期待できます。また、相続人が土地を売却せずに済むことで、家族の生活基盤を守
ることにもつながります。
ファイナンシャルプランナーや税理士と連携し、事前にこの特例を活用した相続計画を立てることが、
スムーズな相続手続きを実現するために重要です。