警備業の認定に関する法的手続など
2024/10/05
警備業の認定に関する法的手続など
1. はじめに
警備業を新規に営むためには、警備業法(昭和47年法律第117号)に基づく認定を公安委員会から受ける必要があります。警備業は、公共の安全を守る上で重要な役割を担っており、その適正な運営を確保するため、法的要件が厳格に定められています。本稿では、警備業の新規認定に必要な法的要件について、警備業法の基本的な枠組み、認定に必要な要件、手続き、さらには実務上のポイントを解説します。
2. 警備業法の基本概念
(1) 警備業の定義
警備業法第2条では、「警備業」とは、他人の需要に応じて、下記の業務を行う事業を指すとされていま
す。
ア 施設警備業務(建物やその周辺の警備)
イ 交通誘導警備業務(交通の整理、誘導)
ウ 身辺警備業務(ボディガード等)
エ 機械警備業務(防犯機器を用いた警備)
これらの業務は、公共の安全や財産の保護に直接関わるため、法的な規制が必要とされています。
(2) 公安委員会の認定
警備業を営むためには、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会の認定が必要です(警備業法第4
条)。この認定は、警備業を営むための必要な法的要件を満たしているかどうかを審査するものであり、
認定を受けずに警備業を営むことは違法となります。
3. 新規認定に必要な法的要件
警備業を新規に営むための認定に際しては、複数の法的要件を満たす必要があります。これらの要件は、警備業の適正な運営を確保し、公共の安全を保護するために設けられています。
(1) 資格要件
警備業を営む法人や個人は、以下の資格要件を満たしている必要があります。
a. 欠格事由の不存在
警備業法第4条では、警備業の認定を受けるための「欠格事由」が規定されています。具体的には、以
下の者などは警備業の認定を受けることができません。
〇 禁錮以上の刑に処され、刑の執行が終わってから5年を経過していない者
〇 暴力団関係者
〇 警備業法やその他の法令に違反し、処罰を受けた者
〇 精神の機能に障害があるため、警備業務を適正に行えないと認められる者
〇 公の秩序または善良な風俗を害する行為を行うおそれがある者
この欠格事由の規定は、警備業が公共の安全に関わる事業であるため、不適切な人物が業務に関与する
ことを防ぐために設けられています。
b. 役員の適格性
警備業を営む法人の場合、その役員も欠格事由に該当しないことが求められます。役員が一人でも欠
格事由に該当する場合、その法人は認定を受けることができません。
c. 管理者の選任
警備業法第13条では、警備業者は「警備員指導教育責任者」という資格を持った管理者を配置するこ
とが義務付けられています。この管理者は、警備員の指導や教育を行い、業務の適正な遂行を監督する
役割を担います。管理者としての適格性が認められない場合、認定は下りません。
(2) 営業所の要件
警備業を営むためには、営業所の設置が必要です。営業所は、実際に業務を行う場所としての基準を満
たす必要があり、公安委員会の認可を受ける際に審査されます。
〇 所在地: 営業所の所在地は公安委員会が認定できる範囲内にあり、適法に使用できるものであることが
必要です。
〇 設備: 営業所には、警備業務を遂行するために必要な設備が整っている必要があります。特に機械警備
を行う場合、防犯機器や監視機器の設置が求められます。
(3) 警備員の資格と教育
警備業を営むためには、実際に警備業務を行う警備員も法的要件を満たしている必要があります。
a. 警備員の資格
警備員として勤務する者も、警備業法の定める欠格事由に該当しないことが必要です。特に、暴力団
員や重大な刑事罰を受けた者は、警備員としての資格を失います。
b. 警備員の教育
警備業法では、警備員が適正に業務を遂行するため、一定の教育を受けることが義務付けられていま
す。警備員には、以下の教育が必要です。
〇 新任教育: 新しく警備員として勤務する者に対して行われる基本的な教育
〇 研修教育: 定期的に行われるスキルの向上や法令遵守に関する教育
これらの教育を適切に行わない場合、業務停止命令などの行政処分を受ける可能性があります。
4. 認定申請の手続き
警備業の新規認定を受けるためには、公安委員会に対して認定申請を行う必要があります。申請には、所定の書類の提出と審査手数料が必要です。
(1) 提出書類
申請時に提出する主な書類は以下の通りです。
〇 認定申請書
〇 会社定款(法人の場合)
〇 役員および管理者の履歴書
〇 営業所の所在地および施設に関する書類
〇 警備員指導教育責任者の資格証明書
(2) 審査と認定
公安委員会は提出された書類を基に、申請者が法的要件を満たしているかどうかを審査します。この審
査には一定の期間が必要で、通常は約2〜3か月程度を要します。審査が完了し、全ての要件を満たしてい
ると判断された場合、認定が下り、営業を開始することができます。
5. 認定後の義務
認定を受けた後も、警備業者には法的義務が課せられます。これには以下のような内容が含まれます。
(1) 業務報告
警備業者は、毎年、業務の内容に関する報告を公安委員会に提出する義務があります。これにより、公
安委員会は警備業務が適正に行われているかを監督します。
(2) 法令遵守
認定後も警備業法や関連法令を遵守し、適切な警備業務を行うことが求められます。法令に違反した場
合、業務停止命令や認定の取消しなどの行政処分を受ける可能性があります。
(3) 継続的な教育
警備員に対しては、認定後も継続的に教育や訓練を実施し、最新の技術や法令に対応できるようにする
必要があります。
6. まとめ
警備業を新規に認定されるためには、警備業法に基づく複数の要件を満たす必要があります。これには、欠格事由の不存在や適切な管理者の配置、警備員の教育などが含まれ、公共の安全を守るための厳格な基準が設けられています。また、認定後も法令を遵守し、適切な運営を続けることが求められます。
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