建設業と許認可:行政書士による解説
2024/10/21
建設業と許認可
行政書士による解説
1. はじめに
建設業は、我が国の経済を支える重要な産業の一つです。しかし、その特殊性から、他の産業に比べて厳格な規制が設けられています。本稿では、建設業に関わる主要な許認可について、行政書士の立場から解説いたします。
2. 建設業許可の概要
2.1 建設業許可とは
建設業許可は、建設業法に基づいて、建設工事を請け負うために必要な許可です。この許可は、発注
者の保護や建設工事の適正な施工を確保することを目的としています。
2.2 許可の種類
建設業許可には、以下の2種類があります:
(1)一般建設業許可:発注者から直接工事を請け負い、かつ下請契約の総額が4,500万円(建築一式工
事の場合は7,000万円)未満の場合に必要な許可
(2)特定建設業許可:発注者から直接工事を請け負い、かつ下請契約の総額が4,500万円(建築一式工
事の場合は7,000万円)以上の場合に必要な許可
3. 建設業許可の取得要件
建設業許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります:
3.1 経営業務管理責任者
常勤の役員等のうち1名以上が、以下のいずれかの経験を有していること:
(1)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって経営業務を補佐した経験を有す
る者
(3)建設業に関し7年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって経営業務を補佐した経験を有す
る者
3.2 専任技術者
営業所ごとに、専任の技術者を置くこと。専任技術者は以下のいずれかの要件を満たす必要がありま
す:
(1)一定の国家資格を有する者
(2)実務経験者(一般建設業:10年以上、特定建設業:15年以上)
3.3 財産的基礎
(1)一般建設業:500万円以上の資産超過
(2)特定建設業:2,000万円以上の資産超過、かつ欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
3.4 誠実性
申請者が、建設業法、他の法令の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受ける
ことがなくなった日から5年を経過しない者でないこと等
4. 建設業許可の申請手続き
4.1 申請先
建設業許可の申請先は、以下のとおりです:
(1)2以上の都道府県に営業所を設ける場合:国土交通大臣
(2)1つの都道府県内にのみ営業所を設ける場合:都道府県知事
4.2 必要書類
主な必要書類は以下のとおりです:
(1)建設業許可申請書
(2)商業登記簿謄本
(3)定款
(4)株主名簿
(5)財務諸表
(6)経営業務の管理責任者の証明書類
(7)専任技術者の証明書類
(8)誓約書
(9)その他必要書類
4.3 手数料
申請手数料は、新規許可申請の場合、1業種につき15,000円(都道府県知事許可の場合は9,000円)で
す。
5. 建設業許可の更新
建設業許可の有効期間は5年間です。継続して建設業を営むためには、5年ごとに更新手続きを行う必要があります。更新の申請は、有効期間満了の30日前までに行うことが望ましいです。
6. その他の関連する許認可
6.1 建設業退職金共済制度
建設業退職金共済制度(建退共)は、建設労働者の福祉の増進と建設業の振興を目的とした制度で
す。公共工事の入札参加資格として加入が求められることが多いため、実質的に強制加入に近い制度と
なっています。
6.2 経営事項審査
経営事項審査は、公共工事の入札参加資格の審査や等級格付けに用いられる制度です。建設業者の経
営状況、技術力、社会性等を総合的に評価します。
6.3 建設キャリアアップシステム
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、建設技能者の資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴
等を業界横断的に登録・蓄積する仕組みです。将来的には、公共工事の発注において、CCUSの活用を
要件とすることが検討されています。
7. 行政書士の役割
建設業許可の取得や更新、その他関連する許認可の手続きにおいて、行政書士は重要な役割を果たします。具体的には以下のような業務を行います:
(1)許可申請に必要な書類の作成
(2)申請書類の審査・点検
(3)行政機関への申請手続き代行
(4)許可要件や法令に関する相談対応
(5)経営事項審査の申請支援
(6)各種変更届出の作成・提出
行政書士は、複雑な許認可制度を熟知し、申請者と行政機関の橋渡し役として機能します。適切な助言と正確な書類作成により、円滑な許可取得や更新を支援します。
8. 結論
建設業に関わる許認可制度は複雑で、常に変化しています。建設業者は、これらの制度を正しく理解し、適切に対応することが求められます。行政書士は、専門的な知識と経験を活かし、建設業者の皆様の事業展開を法務面からサポートいたします。建設業許可やその他の許認可に関してお悩みの際は、ぜひ行政書士にご相談ください。